カモメの背を見ながら⑯

追想

生命だから、生きようとする。この体を構成している細胞には独自の生きる意志がある、持ち主の意志とは関わらず。それは、わかる。だったら何故、生命は存在している。生命に意味はあるのか。このただのたんぱく質のかたまりが意志を持ち感情を持ち生きる。何故だ。それを知り得ないといういらだちが、長年の生活に影を落とし続けていたようだった。

ぼくは群青色から闇に刻々と変わっていく宇宙のショウを見つめつつ、高校三年生の12月の冬の日を思い出していた。

 

*

 

クラスの連中と、自転車置き場に居た。少なく見ても500台は停められる、広大な駐輪場だった。

ぼくが通っていた高校では、毎週土曜日の昼過ぎに清掃の時間があった。自転車置き場の清掃の担当である我々。連中は、各々竹ぼうきや塵取りなどを手にしながら、いっこうに清掃などする気配もなく雑談に興じていた。

ぼくもそこの清掃の担当だったが、それをする気も群れる気もなく、手ぶらでひとりズボンのポケットに手を突っ込み、気を抜いてブラブラしていた。早くお好み焼きでも食いに行きたいな、と思いながら。

 

そこに突然学年主任のニシガワがやってきた。お前ら何やってんだ、ソウジしろ!と怒号が響くと、固まっていたクラスメートの輪が、蜘蛛の子を散らすように駐輪場の中に拡がっていき、各自清掃を始める。

アホやなあ、醜いなあ、と思って連中のことを見ていた。去勢され飼いならされた羊のような級友達と、権力の飼い犬みたいなニシガワ。しょうもないなあ、寒いなあ、と思ってそのまま突っ立っていると、ニシガワが目をつけて近寄ってきた。おいお前ソウジしないか!ポケットから手を出せ!ぼくは一切言うこと聞かず態度を固め、奴には目もくれてやらない。顎を斜め上に曲げて、上目づかいに乾いた冬空を見上げる。

おいお前なんでソウジしないんだ!と、奴が声を荒げる。目をやると、権力の汁を吸ってむっくり白くムクれたよな、醜悪な顔。縦に、横に、額に、眉間に、しわが何本も深く刻まれている。脂ぎった白い大きな鼻その二つの孔から大人の社会の腐敗臭を含んだどす黒い息が出入りし、鼻毛がたなびいていた。その鼻の上に高価そうな銀縁の眼鏡が誇らしげに乗り、緩く上下している。その奥の白目が濁ったまなこが怒りに震えている。ぼくは前からこいつのことが、たいそう気に食わなかった。

 

近づいてきたニシガワは、お前なぜソウジしないんだ?理由を言え理由を、と顔を紅潮させまくし立てる。理由なんかない、やりたくないからやらない。でもそれをお前なんかには言わないと黙ってニシガワを睨む。お前、職員室に来い、それともソウジするか?と問うので前者の選択をし、ニシガワの後を距離を置きながらふんぞり返って職員室に向かった。

 

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この記事を書いた人
MAZIO

人生の意味を探し続けて30年。考え研究し実践し体験し出た答えは「人生には意味がない。ニンゲンは自由だ」。人を笑わすことが大好きかつ自分が笑うことも大好き。2009年からコーチングのセッションやってて歴10年目に突入。タロットも同じくらい。個人セッション受付中。得意ジャンルは人間関係、お金、目標達成など。

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