なんくるなかった③

追想

ここにやってきてびっくりしたのは、みな開放的で人懐っこいということだった。本州から来た人も含め。

オキナワの大学というと地元の人が多そうなイメージがあるかもしれないが、県内と県外の学生比率はだいたい半分半分で、県外生のほとんどは九州の出身であった。

 

このアパートにやってきた時にまず、鹿児島出身のツキノに出会った。ツキノと仲良くなり、芋ずる式にブリーフ先輩のヒラタさんまでたどり着くのに一ヶ月かからなかったと思う。

ツキノはいわゆる「よかにせ」で優男だった。眼鏡をはじめ小物やお洒落に気を使っている気配があった。みなそれぞれ方言どうしで会話していたのだが彼は何故か鹿児島弁ではなく標準語を話していた。父親が有名大企業に勤めていて出身高校の偏差値が高いということをいつも鼻にかけていた。

ケンタッキー・フライド・チキンと西武ライオンズが大好きなツキノは、入学後すぐ赤いスポーツカータイプの日産パルサーEXAを購入し、ディスコの黒服のバイトを始めた。

アパートの連中はそんなツキノのことを毛嫌いしていて、陰口もいとわなかった。

 

「ケンタッキー・フライド・チキンっていう呼び方、なんか好かん。ただのから揚げやろうもん。」

 

陰口と言っても、この程度のものだったが。

限りなく透明に近いブルーの世界は、遠かった。

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