なんくるなかった④

追想

「ねえ、アーニー、第二外国語はどうするつもり?」

オレはアパートの連中から「アーニー」と呼ばれていた。

 

現役入学のツキノが2つ上のオレのことを「兄い(あにい)」と呼んだのが始まりで、そのうちそれが変化し、アパートの全員がアーニーと呼ぶことになったのである。

ツキノは気取って嫌なところのあるヤツだけれど、なかなかの情報通で、単位が取りやすい講義などを惜しげもなく教えてくれる。

「アカミネっていう教授の、中国語がおすすめだよ。」

 

それでも結局、事あるごとに「いかに自分の周りに女友達が多く自分がリア充であるか」をアピールしてくるので、理系が圧倒的に多いアパートの連中からやっぱり嫌われるという、残念なヤツであった。

「うちの国文(学科)のオンナノコがさ、ビーチパーティーに連れてけってさ。で、学科の連中でクルマ出したんだけれどもうボクの車は全員オンナノコで。」等々、こういうのが日常茶飯事であり、二言目にはオンナノコ、である。

 

ある日の夕方、そんなツキノに聞きたいことがあり、彼の部屋のドアをノックする。コンコン。コンコン。

コンコン。コンコン。

中に居るはずなのだが返事がない。

コンコン。コンコン。

寝ているのか。

 

仕方がないので何気にドアの右横についている、すりガラスの小窓をズラして全開にした。下半身スッポンポンであぐらをかいている、ツキノの端正な横顔が目に飛び込んできた。足もとにエロ雑誌が拡がっている。右手が股間に伸びている。

 

「アーニー、ごめん、オナニーしてた」

 

いや、その謝罪と報告、いらんから。

見たらわかるから。

そして韻を踏むな。韻を。

 

まるで獲物を取り逃がした猟犬が主人に見せるような、バツの悪そうな表情をこちらに向けるツキノ。それを見届けたオレは、無言で小窓を閉じ自分の部屋に戻った。

限りなく透明に近いブルーの世界は限りなく遠かった。

この記事を書いた人
MAZIO

人生について考え考え研究して研究して体験して体験して出た答えは「人生には意味がない」。人を笑わすことが大好きかつ自分が笑うことも大好き。2009年からコーチングのセッションやってて歴10年目に突入。タロットも同じくらい。個人セッション受付中。得意ジャンルは人間関係、お金、目標達成など。モットーは「光と闇は同じもの」。

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コメント

  1. もっちー より:

    セサミストリートのアーニーに似てるからかと思ったw