その悲しみはおともだち

How to

おじさんいま、50歳。

どんな子供だったのかって?
そのへんによくいる、「なぜなに坊や」だったよ。

「どうして?なぜ?なんで?」っていつもお母さんに聞いてたね。

学校は嫌いだったね。いちばん知りたいことを教えてくれないんだもの。
家でアンデルセン読んだり、昆虫の図鑑を見てるほうがずっと楽しかった。

そんなふうに、子供の頃に大人があんまり教えてくれなかったことの中で、大切だと思ってることは、いま三つあるの。

・お金のこと
・性のこと
・心のこと

でね、今日はその中で心のこと、とりわけ感情(きもち)のことについて書いてみたいと思います。

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感情って、何なのでしょう。

まず目に見えないよね。でも、普段みんな泣いたり笑ったりするよね。怒ったり喜んだり。見えないけれど確かに自分の中にはそういう力があって、つい自分の心やからだを動かすのはわかるよね。
ちなみに英語では感情のことを「エモーション」って言う。それは、「外に向かって動く」っていう意味があるの。
だから感情が生まれると人は顔が変わる。体も変わる。表情が変わる。そう、表情っていうのは、表に出た感情のこと。

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感情はね、ものすごいエネルギーなんだ。だから、感情っていうのは大きく例えると、台風や地震みたいに、実はぼくら人間がやり込めようとしてもまったく抵抗できないくらい、すごいものでもあるんだ。

だけれど、大人たちは言うよね。

そんなに、泣いてはだめ。
そんなに、怒るのいい加減にしなさい。
そんなに、はしゃいだら恥ずかしいでしょ。

何故だと思う?

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それはね、大人たちも感情というものが苦手だからなんだ。だから、あまり感じないようにしている。特に、怒りと哀しみの感情は敵にされているのさ。

そして自分の感情でさえ、どうしていいかわからない大人が多いんだ。だから、子供が感情を素直に出しているのを見るとどうしていいか分からなくなる。

人が大人になるにつれいろんなことに挑戦しなくなったり、新しいことや失敗を避けるのは、感情を感じるのが怖いからなのさ。

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おじさんもね、子供の頃から「泣くことはいけない」って教わって育ってきたの。「男の子だから泣いちゃいけません」って。先生もお母さんも友達のお母さんも、そう言ってた。

でもね、誰よりも泣き虫だったんだ。もちろんちょっとでも悲しいことがあったら涙が止まらないし、反対にすごく嬉しいことがあっても涙が止まらない。小学校の1年生の時は同級生から「なきむし」「よわむし」と言われた。

そんな風になにかあると涙が止まらないことは、高校生の時まで続いたね。
でもさ、「泣くのはだめ」ってみんないちおうは注意するけど、その年のころまではまだ許されたところあるんだね。

ついに20歳になった頃から、泣いたら許されない。だからだんだんうまく泣くのを我慢できるようになってきた。怒ることも我慢できるようになってきた。もしいじめられたり嫌なことされても、無理やり笑って過ごせるようになってきた。「いつも変わらないよね」「いつも怒らないよね」って、友達から言われるようになった。

だけどおかしいよね?感情って、台風や地震みたいにすごいエネルギーなのに、どこに行っちゃったんだろう?
我慢した感情は、消えちゃうことできるのかな?

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もうしばらくおじさんの話をするとね。

おじさん30歳を過ぎてしばらくたって、仕事に失敗しちゃったのさ。
そうしたらね、毎日こう思ってた。「お前は死ね」って。
「お前は死ね」って、毎日自分に言い聞かせるの。
「しねしねしねしねしねしねしね」ってね。一日中自分に繰り返すのね。

そして「死にたい」って思うようになって、どこで死のうかとか、ああやって死ねたらいいなとか、ずっと考えてた。
高いビルを見たら、「あそこから飛び降りようかな」と思うし、台風が来て強い風が吹いたら、「大きな看板が空から落ちてきて頭にぶつかって死んだらいいな」とか思ってた。

何でこうなったと思う?
何がおじさんに、死ね死ねって言うように仕向けたんだろう?

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我慢した感情はね、消えないの。しかもね、知らないうちに自分を壊そうとするの。
我慢した怒りや哀しみが、たくさんたくさんたまって、おじさんの中でどんどんどんどん広がっていって、おじさんを攻撃するの。自分の感情が自分を攻撃するの。

「死にたい」ってね、言いかえると感情が「認めてよ、ここに居るよー!!!」ってぼくらに言ってる言葉でもあるのね。

ぼくらに認めてくれないと感情は消えられないから、ずーっと無視されると体や心をおかしくしてまで、気付いてよって伝えてくる。

だからね、感情とうまく付き合うには、まず無視をしないことが大事なんだと思うよ。

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そして次にどうやって感情とうまく付き合ったらいいのか、ってこと言うね。

まず運動したりスポーツしたり、とにかく体を動かしたりすること。歩くだけでもいいよ。
強い感情を感じたら、お掃除でもお手伝いでもいいから、なんでも体を動かそう。

あとはね、書いたりすること。直接泣いたり、人に対して怒ったりしてもいいけれど、そのあとがめんどくさいじゃん。だからね、紙に向かって書くこと。絵でも文章でもいいよ。でも、書いた紙を人に見られないように気を付けてね。

次にね、仲がよくって信頼できる友達や親なんかに自分の気持ちについて話すこと。話すことで、もっと気持ちが高ぶることもあるけれど、結局はすっきりするんだもんね。犬や猫や、お花や木に話しかけてもいいと思うよ。

だけれど一番すごい方法がひとつあってね、それは素直に感情を感じようとすること。
怒りや悲しみをのけものにしたりしないで、「自分はこの感情を感じきる」って決めて、しばらく感ずるままにじっとしてるんだ。
怖くないよ。ちゃんといっしょに居てあげれば、仲のいいともだちがおうちに来て遊んだあと帰っていくみたいに、バイバイって去っていくんだ。

感情があるのは、ぼくらが生きてるっていう証拠。悪いことじゃないんだよね、ほんとうは。

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