カモメの背を見ながら②

追想

拾ったタバコを吸うのは、存外にうまかった。

当時は浮世でまともな仕事する気などさらさら無く、半年前に数百万ほどあった貯金はあっという間に底をついていた。

 

財布をほじくり返すと131円。銀行口座の残高にはATMから下ろせない、はした金がいくつか。それらすべて合わせても1000円ほどの持ち金。

はじめは自宅のごみ箱に捨てたシケモクを穿り出して吸うことをしていたが、やがてそれも無くなると路上に落ちた吸殻を探すようになった。

 

しばらくするともっと効率の良い手段を見つけた。もっと、ごっそりと吸殻を手に入れる方法。
それは近所の家の軒先にあった。そこに置かれた空き缶の中には、たくさんの吸い殻が入っていることがあった。パイナップルやウズラの卵などが入っていた缶。家の中ではタバコを吸えない主人が、玄関先や軒先で一服した後の吸い殻をそれらの中に捨てるのだろう。その中身だけをくすねて、持ち帰って嗜む。

 

家賃はもう3か月ほど払っていない。不動産屋から携帯に着信履歴が十数件ある。渋々コールバックすると、「いつ払えますか」「親に連絡して払ってもらってください」等というのはまだしも、生活保護の受給を勧められることもあった。

どうしてこういうことになってしまったのか。

金、金、金。金が欲しい。

まともな仕事をする代わりと言っては何だが、ぼくはとある犯罪行為に手を染めだしていた。

 
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コメント

  1. シンナリヤ シンナリヤ より:

    面白い内容なりね。

    次回も楽しみにしているね。