カモメの背を見ながら⑤

追想

ぼくからの電話を受けて1時間ほどで警察署にやってきた、アケミさんと面会した。ぼくの顔を見て血相を変えている。

「電話もらった時、オジマさん、病気になったんだろうなって思った。それにしてもひどい顔してる」

「すみません」

やっとのことで声を絞り出す。
アケミさんと警察官が話している。ぼくと彼女との関係性を確認しているようだった。彼女とはカウンセリングや占いの仲間で、お互いの活動を応援しあっている間柄だった。

アケミさんが来てくれたおかげで、その場での逮捕は免れたのだったが、普段はブログなどに「愛」だの「光」だのと綺麗ごとをのたまっていた手前、正反対とも言える犯罪を犯し続けていた自分に対して嫌悪感や羞恥心が止まらず、どうしても顔を上げられなかった。

 

*

 

その年。春がそうであるように、これまた短い北海道の夏になりつつあった。アケミさんの尽力もあって不起訴となったぼくは、アルバイト乗組員として、とあるフェリーに乗っていた。

その船の名は、「きたかみ」という名前だった。13,937トン。

あの震災当時、仙台港に停泊していた「きたかみ」だが、地震の知らせを聞いて機転をきかせた船長はあえて津波に向かって垂直にフルエンジンで出港した。船は横などからの波には弱いが縦からの波には強い。

つい4ヶ月ほど前、無事に沈没を免れたという、その由緒ある船「きたかみ」のとある乗務員船室の中に、ぼくとオオタニさんは居た。

 

「三億円持ってるんだけれどねえ・・・」

オオタニさんは、こんなことは余り大したことでない、とでもいう調子で切り出した。

 

*

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この記事を書いた人
MAZIO

人生の意味を探し続けて30年。人生について考え研究し実践し体験し出た答えは「人生には意味がない。ニンゲンは自由だ」。人を笑わすことが大好きかつ自分が笑うことも大好き。2009年からコーチングのセッションやってて歴10年目に突入。タロットも同じくらい。個人セッション受付中。得意ジャンルは人間関係、お金、目標達成など。

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