追想

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カモメの背を見ながら⑭

昨晩、ひとりになった部屋で「星守る犬」という映画を観ていた。地デジに対応していない古いテレビ。平面ブラウン管のその画面を見つめていた。 ストーリーとしては主に、西田敏行演じるうだつの上がらないおじさんが、飼い犬と共に関東から北海道へ彷...
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カモメの背を見ながら⑬

この仕事を始めてから2週間ほど経っていた。 今日もきたかみは仙台港に接岸する。 オオタニさんは停泊の間の自由時間に、松島までタクシーをチャーターし観光に行くと張り切っていた。 そんなオオタニさんを見送ったぼくは、陸に降...
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カモメの背を見ながら⑫

入浴やら洗濯やらひと段落したぼくら3人は、午後11時の静まったメスルームに居た。 「静まった」といっても注意を注ぐや否や、きたかみの28,800馬力のエンジンの運転音がすぐに意識を支配する。それはハーモニーを放棄した通奏低音のようであ...
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カモメの背を見ながら⑩

夏休みに入り乗船客が増えるにつれ、ぼく達の仕事もなかなか大変になってきた。洗い場に運ばれるトレーや皿の量も度を超す。家族連れ、合宿に行く学生、老人会などの団体客の歓声が朝晩の食堂にこだまする。 基本はセルフサービスのレストラン...
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カモメの背を見ながら⑨

「きたかみ」は、苫小牧と仙台の間を延々と往復する。 夕方に苫小牧を出航すると約15時間かけ翌日に仙台に着く。そして停泊し夕方に仙台を出航するとまた約15時間かけ苫小牧に着く。 着岸、停泊、出航。ひたすら、着岸、停泊、出航その繰り返し...
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カモメの背を見ながら⑧

朝の食事が終わると休憩に入る。オオタニさんとぼくは各々のベッドにもぐりこんで本を読んだり睡眠をとったりする。オオタニさんは小説が好きなようであった。 「幅広く知識を身につけるには小説が一番なんだ。プロの作家は、よく調べたりよく取材して...
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カモメの背を見ながら⑦

アラームをセットしていた携帯電話が震え、目を覚ます。 「よく眠れました?」 「ああ。揺れがひどかったけれどね。あまりの揺れに、背中が指圧されているような感じだったよ。でもやっぱ酒を飲むと違うね。眠れる。」 「ぼくは逆ですね...
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カモメの背を見ながら⑥

オオタニさんは、50歳近くの、小さなファンドを経営している社長だ。お客さんのお金を預かって30億円ほど運用しているという。オオタニさんは今のところ資産が三億「しか」ないのだと言う。せめて六億ないとファンドの仕事をリタイア出来ないのだという。...
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狂人なのかもしれない

夫婦のあり方は難しい 僕の両親は離婚してます。 夫婦喧嘩程度で終わるならいいけど、 「修復不可なら、さっさと別れちまえ!」 どっちが善でどっちが悪とか、そんなのはどうでもいい。 これが僕の持論です。 親の...
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カモメの背を見ながら⑤

ぼくからの電話を受けて1時間ほどで警察署にやってきた、アケミさんと面会した。ぼくの顔を見て血相を変えている。 「電話もらった時、オジマさん、病気になったんだろうなって思った。それにしてもひどい顔してる」 「すみません」 や...