追想

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カモメの背を見ながら④

身元引き受け人のアケミさんが警察署に到着したとのことだった。刑事が彼女を迎えに行き、席を外す。 一人になり、つかの間。意識が現実から逸れる。遠く南国に暮らす母を思い出す。そして母の姿より母の子宮を想う。死んで、あの中に還り羊水の海で眠...
追想

カモメの背を見ながら③

犯罪行為はそれほど長くは続かなかった。 その期間は、北海道の冬が終わり夏になるまで、亜寒帯気候特有の短い春の間くらいだった。 夏を前にして、捕まったのだ。 あの清原が覚せい剤で捕まったことがあった。 感想とし...
追想

カモメの背を見ながら②

拾ったタバコを吸うのは、存外にうまかった。 当時は浮世でまともな仕事する気などさらさら無く、半年前に数百万ほどあった貯金はあっという間に底をついていた。 財布をほじくり返すと131円。銀行口座の残高にはATMから下ろせな...
追想

カモメの背を見ながら①

昼休み。 ぼくはオイルと錆びのにおいがする鉄製の階段を下って、地上に降りた。 しばらく歩いて、さっきまで乗っていた船のほうを振り返ると、ちょうど二人の船員が甲板に出てきたところだった。 船の最上部の甲板に立つその二人の目には、...